日本のお正月には欠かせない、おせち料理。
そもそもおせちとは、かまどでご飯を炊いたり冷蔵庫がなかった時代に、正月三が日はかまどの神様を休ませるために、冬の常温で日持ちする料理を年末にまとめて作っていたもの。
それが転じて、正月くらいは主婦も台所仕事をあまりしなくて済むように、という意味合いに変わり、今に続いています。
現在は、年末年始もスーパーやファミレスが開いているので、おせち本来の「日持ちする正月の食べ物」という役割は消えつつありますが、おせち料理の重箱に詰められるそれぞれの食材には、きちんとした意味があります。
おせち料理と重箱の段数の意味、食べるときに使う祝い箸についてまとめました。
おせち料理のそれぞれの意味を知りたい
「おせち料理」とは、本来、1年に4回ある季節の変わり目となる節句の時期に、神様にお供えする料理のことでした。
その中でも特に重要とされた節句は正月、それからおせち料理は、お正月だけ食べるものへと変化したんですね。
正月に、それぞれの家にやってくる年神様と一緒に食べる料理であり、家族の健康や幸せを祈って、縁起のいい食材を詰めたものを「おせち料理」と呼びます。
年神様(としがみさま)とは
元旦になると、山から各家庭にやってくる神様を「年神様」または「歳神様」といいます。
年神様は新しい年の幸福を、その家族にもたらしてくれます。
祝い肴(いわいざかな)
黒豆にしわができないよう甘く煮たもの。
「マメ」という言葉は、健康や丈夫さを意味しています。
黒く日焼けするほどマメに働けるように、マメに生活できるようにという語呂合わせです。
カタクチイワシの小さなもの(ゴマメと呼ばれる)を甘辛く煮たもの。
昔、カタクチイワシを田んぼの肥料にしたところ、米が豊作になったことから、五穀豊穣を願っておせちに入れるようになりました。
ニシンの魚卵を汁に漬け込んだもの。
ニシンの卵は数が多いので、子宝・子孫繁栄の意味が込められています。
「二親(にしん)」からたくさんの子が生まれるということで、おめでたいと言われています。
ごぼうを軟らかく煮てからたたき、開いたもの。
細いながらも長く地面の下に根を張るごぼうは、縁起がいいとされています。
ごぼうを開くことから開運にもつながり、細く長く幸せに過ごせるようにと願いが込められています。
口取り
紅白はお祝いの色とされています。
紅は魔除け・慶びを、白は清浄や神聖を表します。
かまぼこは日の出を象徴しているので、正月に欠かせない食材です。
魚のすり身(またははんぺん)に卵とだしを加え、甘く焼き上げた後、巻きすで巻いて形を整えたもの。
普通の卵焼きよりも見た目が華やかであることから、しゃれた装いを意味する「伊達もの」から名付けられたという説があります。
昔は、大事な書物や絵は巻物にしていたことから、学問や教養を身につけられるという意味があります。
栗やさつまいもを餡にして練ったものに栗が入っている。
「きんとん」とは、豊かさと金色に輝く財宝を意味し、富を得られるように金運を願ったものです。
ニシンなどの魚を昆布で巻いて煮たもの。
「喜ぶ」と昆布をかけた語呂合わせです。
また、ニシン(数の子に使う魚卵を産む)を巻いている(巻は結びを表す)ことから、子孫繁栄の願いも意味します。
焼き肴(やきざかな)
ブリは出世魚(魚の成長に合わせて呼び名が変わる魚)なので、出世を願う意味があります。
「めでたい」とタイをかけた語呂合わせです。
エビは腰が曲がり長いひげが特徴であり、その様子から長寿や長生きが連想され、縁起のいい食材として正月料理に使われます。
またエビは脱皮を繰り返して大きくなるので、出世を願うものとして扱われます。
酢の物
生魚・にんじん・だいこんで作られる酢の物だったので「なます」と呼ばれます。
現在は生魚を使うことはあまりなく、ゆずの千切りを添えることが多くなりました。
にんじんとだいこんで紅白を表し、お祝いの日を彩ります。
れんこんの酢の物です。
れんこんには穴がたくさん開いていることから、将来がよく見える・見通しがきくという意味合いがあります。
煮物
八ツ頭(里芋)・こんにゃく・しいたけ・れんこん・しいたけ・にんじんを煮たもの。
里芋は子芋がいっぱいつくことから、子宝に恵まれるようにとの願いが込められています。
にんじんは梅花といって、梅の花のように角の丸い5角形にしたものを使います。
金柑を甘く煮たもの。
「きんかん」の「ん」は「運」に通じていて、2つあることから運を重ねるという意味になります。
また、金柑は財宝である金冠を表すので縁起がいいとされています。
おせちの重箱には意味がある!重箱は何段にするのが正しい?
ワンプレートおせちもオシャレですが、本来のおせち料理は、重箱に詰められていることが多いです。
その理由や、重箱の段数について説明します。
おせちの重箱の意味
おせち料理は重箱に詰められているのが一般的です。
重箱とはその名の通り箱を重ねたものであり、そのことから「めでたさを重ねる」という意味を持ちます。
また、おせち料理は1日で食べきるものではなく、数日かけて食べることから、保管場所を取らず、ほこりなどが入らないようにふた付きである必要がありました。
重箱を重ねることでフタにもなり、また場所を取らないという利便性もアップ。
重箱は外側が黒色の漆塗りで、内側は朱色であるのが正式とされていますが、現在は個性豊かな重箱が市販されていて、おせち料理だけではなく、運動会やお花見などにも気軽に使えるものになっています。
デパートなどで注文するおせち料理では、使い捨ての紙製の重箱が多いです。
重箱の段数について
地域によって違いはありますが、おせちの重箱は四段が正式とされているところが多いです。
しかし現在は、少人数の家庭が多くなり、デパートなどで注文するおせちは、主に二段重や三段重となっています。
おせち料理の詰め方は地域によって違いますが、一般的な四段重の場合を説明します。
一の重:祝い肴
黒豆・田作り・数の子・たたきごぼうなど、酒のつまみになるもの
二の重:口取り
紅白かまぼこ・伊達巻・栗きんとん・昆布巻きなど、家族全員が食べられるもの
三の重:焼き肴
鰤(ブリ)の焼き物・鯛(タイ)の焼き物・海老(エビ)の焼き物など
与の重:酢の物・煮物
※「四」は「死」を連想させるので、代わりに「与」を使います
紅白なます・酢蓮(すばす)・煮しめ・金柑甘露煮など
※各段に詰めるおせち料理の品数は、奇数になるようにする
五段重の場合、一の重から与の重までは四段重と同じように詰め、五の重は空にします。
これは、来年は重箱をいっぱいにできるくらい豊かになっていますように、という願いが込められています。
また、五の重を控えの重として、家族の好きなおせち料理を詰めることもありますよ。
おせちを食べるときに使う「祝い箸」とは
おせち料理をいただくときには、柳やひのきで作られた「祝い箸」でいただくと縁起がいいとされています。
柳は厄を払うと言われています。
祝い箸は、両端とも細くなっていて「両口箸」と呼ばれます。
一方は年神様、もう一方を人が使うことで、正月は家にやってきてくれた年神様と共に食事をする(神人共食)という意味を持ちます。
また祝い箸は両端が細く、真ん中が太くなっているので「はらみ箸」とも呼ばれ、五穀豊穣や子孫繁栄も表しています。
祝い箸は一度使ったら捨ててしまうのではなく、使った人が自分で洗って、松の内(1月7日ごろ)まで繰り返し使うもの。
使い終えた祝い箸は、書き初めなどを燃やす「どんど焼き」で、一緒に燃やすといいとされていますよ。
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おせち料理についてまとめ
重箱にぎっしりと詰まったおせち料理。
ひとつひとつの食材に、家族の幸せを願う意味があることを知ると、おせちを食べるのがますます楽しみになりますよね♪
子供にとっては苦手なものが多いおせち料理ですが、意味があることを教えてあげたら、少しは楽しく食べてくれるかも?
おせち料理は1年に一度のこと、家族そろっておせち料理を囲みながら、新年の抱負を言い合うのもおすすめです。